東京・市ヶ谷の防衛省
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防衛省が、相手の射程圏外から攻撃できる長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」を1500発以上整備する方向で検討していることが31日、分かった。複数の政府関係者が明らかにした。防衛省は同日、令和5年度当初予算の概算要求を決定。過去最大の5兆5947億円を計上し、さらに多数の事業について金額を決めない「事項要求」とした。日本への攻撃を相手に躊躇(ちゅうちょ)させる「反撃能力」としての活用を念頭に、スタンド・オフ・ミサイルの量産化へ向けた関連費用を盛り込んだ。
政府は、年末にかけて進める国家安全保障戦略や防衛計画の大綱など戦略3文書の改定作業で反撃能力の保有に踏み切る見通しで、スタンド・オフ・ミサイルはその中心となる。
防衛省が導入するスタンド・オフ・ミサイルで主となるのは、陸上自衛隊に配備されている国産ミサイル「12式地対艦誘導弾」の改良型だ。飛距離を現行の百数十キロから中国大陸まで届く1000キロ以上に延伸する。
反撃能力の攻撃対象は日本へ発射される兆候のある敵ミサイルの拠点だけでなく、戦闘の初期段階で制空権に関わる対空レーダーや飛行場なども想定される。島嶼(とうしょ)防衛で敵の艦艇や上陸部隊を遠方から狙うために確保しておかなければならない数量も必要で、標的を外したり、迎撃されたりするものを計算した上で1500発以上が必要と見積もる。
概算要求では防衛力強化の7つの柱として、スタンド・オフ防衛能力▽総合ミサイル防空能力▽無人アセット(装備品)防衛能力▽(陸海空や宇宙、サイバー空間、電磁波といった新領域を含む)領域横断作戦能力▽指揮統制・情報関連機能▽機動展開能力▽持続性・強靱(きょうじん)性-を掲げた。
このうち、5年度予算の目玉となるスタンド・オフ防衛能力は12式改良型の地上発射型ミサイルを早期に実用化できるよう関連経費272億円を計上。事項要求で積み増しを図る。
現時点での要求額5兆5947億円は、概算要求として過去最大だった前年度の5兆4898億円を上回るが、大半が事項要求だ。
政府が6月に策定した経済財政運営指針「骨太の方針」では、北大西洋条約機構(NATO)が防衛費の基準とする国内総生産(GDP)比2%以上に触れ、「5年以内の抜本的強化」を求めた。日本の場合、GDP比2%は約11兆円。政府は戦略3文書を改定する年末にかけて財源も含めて検討し、防衛費の総額を確定させる。